インタビュー企画Vol.3【主婦から見える日本の風景~飲食店パート勤務】
入学時健診のシーズン。子どもの小学校入学を機にパート勤務にでる女性も多い。
結婚以来14年。三人の子育てもひと段落し、久しぶりにパートとして社会にでたの佐藤和子(仮名)さんから匿名を条件にお話を伺った。
彼女は、求人の『アットホームな職場です。』『和気あいあい』の言葉と従業員の笑顔の写真で応募したそうだ。
子どもが学校に行っている昼間に3時間程度、開店前の飲食店で仕込みを週2-4日程度勤務ということだった。
家事育児に支障がでない範囲での仕事となると、1日4-5時間まで週三日程度で自宅付近、という条件で探す主婦が多い。
安倍晋三のパートで月25万と言うのはどれ程ずれているのだろう。
まずはお店の様子をうかがってみると・・・
佐藤さん「仕込みのパートが一人に社員さんが数人と夜の営業時間のアルバイトが数人というこじんまりしたお店です。
慣れない仕込みの私が不出来でイライラするのは当然だと頭では分かっていても、冷たい視線や言い方が辛かったです。
勤めて半年で5人社員候補の人が2日~半年程度で挨拶もなく居なくなってしまいました。
仕込みをしてた後の昼休憩の時間に消えてしまったり、給料日の翌日から無断欠勤で電話がつながらなくなったりと(苦笑)。」
8店舗で一人の人材を奪い合う飲食業界。出入りが激しく人材確保が大変なようだ。外食が増加し、労働人口は減るため、当然のことだろう。
佐藤さん「仕事が慣れていなくて怒られることは平気なのですが、雰囲気が殺伐としていたんです。
挨拶をしても返さない。人手が足りなくのでピリピリした感じ。
店長はいつもイライラ。それがこっちにも伝わるんですね。」
孤独と疎外感を感じ、居心地が悪かったそうだ。年齢や短時間勤務ということで我慢してきたそうだ。そんな状況が最近変わり、職場が楽しくなったと彼女は続けた。
佐藤さん「オーナーが変わったのです。
経営陣の皆さんは明るく最初に『ほしいもの、足りてないものない?』と気軽に聞いてくれました。
今までは、道具もたりなく無理やりやっていました。
店長もとても嬉しいと言っており、経営陣の方は『仕事で無駄なストレスはよくないからね、言って。』と。
『佐藤さんの時給だってあげたいしさ。仕込みスキルあげよう。』とも。
そして、先日の懇親会には私にも声がかかりました。『私、人間扱いされている』『私も一員なんだ。』とすごくうれしかったです。」
この言葉にはっとした。彼女は機械のように無言で作業をこなし、店長の機嫌が悪いと逃げ帰りたい気持ちでパート生活を送ってきたそうだ。
パートだけ声がかからない送別会に疎外感。
人出不足、仕事に必要な道具すら不足、イライラし、開店するので精一杯で殺伐とした雰囲気。
最後は人間関係。よく言われてきたことだ。昨今の日本は機械のように労働したり、不足だらけでいたわりもない職場で人間が歪んでしまっている。
あがる見込みのない給与。経費削減、福利厚生削減。余裕のない職場で心を擦り減らす。
車のブレーキにもあそびが必要なように、人間にも無駄や余裕も必要なのだ。
会社の懇親会や福利厚生を無駄扱いする風潮はどうだろうか?
先輩が後輩を育てることもなく、新人も即ノルマ。派遣スタッフは名刺もなく、所属意識もなく、年賀状を出す相手も仕事関係にはいない。
若いアルバイトも派遣も教育をろくにされず放置される。和気あいあいに飲みにいくこともなく、マンツーマンリーダーが親身に育ててくれることもない。
日本らしさ、とは株主主義の会社経営でなない。一握りの株主ではなく働く仲間を大切にし、育てて欲しい。
経営者は従業員をコストではなく、人財としてみて欲しい。いつから日本は狂ったのだろう・・・。
写真:当ブログの内容とは無関係です。