意外と知られていない横浜大空襲~B-29爆撃機517機(東京大空襲以上)が襲った無差別焼夷弾攻撃
1945.9.2のポツダム宣言受諾にて長きにわたる戦争は、日本の敗戦で幕を閉じた。
敗戦から71年という年月は経過したが、現在は8月を中心に様々ところで、戦争体験の語りを聞く機会があり、テレビや新聞でも過去の歴史に触れることができる。そのような機会に身内以外の人々から様々な話を聞けることは貴重であり、可能な範囲で訪れたいと思い、私は語りの会に出席した。内容は周知の東京大空襲ではなく、横浜大空襲と満州での戦時の体験談だった。
ミッドウェー海戦による惨敗から日本は連敗が続き、制空権を失い、日本本土も連日空襲の恐怖にさらされた。その一つである東京大空襲はわずか一晩で10万人の日本人が亡くなった悲惨な出来事である。
横浜大空襲も東京大空襲のように他の空襲とは違うネーミングには理由があるのだろうか、と思いながら聞くと、たった1時間の間に東京大空襲以上のB29から焼夷弾が投下されたということだった。東京大空襲は一晩でB29が320機、横浜大空襲は1時間ほどで517機が上空から襲ったのだ。そのほかの飛行機も空襲に参加し、雨のように降り注ぐ焼夷弾をさけながら、防火槽の水を被りながら12歳の彼は友人と逃げまどい、助けを呼び足にすがりつく人を助けることもできず、地獄絵図を見ながら逃げたと証言して下さった。
何が地獄絵図かと言えば、すがる人々もそうなのだが、油を仕込んだ焼夷弾(紙と木で出来ている日本の家屋を焼く尽くすためにアメリカで開発された爆弾で、落下途中に複数に飛び散り油もまき散らすため、人々も油をまとって着火される状態になる。)を浴びて皮膚が人体から垂れ下がる姿を橋の上で見たことが一つ。そこからも逃げて公園にたどり着くも、寸前で赤子を庇いながら息絶えている母親の姿を目にしたことも一つ。正気では聞けないような話をたんたんとして下さった。
淡々とした語りで落ち着いた男性は、戦争は勝ち負けではなく双方犠牲が生じて悲惨だと締めくくった。また、アメリカに石油をとめられてエネルギー確保のため、貧しく領土拡大による所得獲得のためだったと分析をしていた。現在の12歳と比較すれば想像もつかないが、12歳どころか当時は小学生ですら石油が足りずに戦争を危惧していたそうだ。
おそらく彼は憲法9条支持者であると思う。なぜなら、そのような会合の列席も一言口にしたので私にはそう思えた。私個人は憲法9条への支持はない。しかし、賛成反対そうほうがあっていいと思う。このような貴重な戦争体験の際に、ひたすら日本が悪かったとか憲法論議になることもある。彼のようにイデオロギーのお披露目会にならずに自身の体験と体験の感想のみを語ることが、貴重な体験を多くの人へ届ける機会になるのだろと思う。それを聞いて、それぞれが感想を持ち自身で考え、未来に向けてどうすべきかを考えていくことこそが大切だと感じた。
日本全土を巻き込み、大空襲や原爆投下に限らず各地で悲惨だった戦争。戦争をイデイロギーや選挙の道具にすることは反対だ。
例えば、靖国神社に行く=愛国者、ではない。気持ちがないなら英霊やご遺族に失礼であり、選挙対策に靖国神社にいくという英霊を冒涜する行為は許しがたい。
靖国神社ほど政治利用される神社もなく、8月は特に心を痛める。
また、戦争犯罪を主張する人々も、現在の価値観を過去に持ち込み、望んでも望まなくてもお亡くなりになった方々への冒涜は人として恥ずべきである。日本は犯罪者ですら亡くなれば仏さま扱いで、死者にムチ打つことはよしとしない。これが日本文化である。戦争が悪であったとしても彼らの眠りを妨げ、ご遺族の悲しみを踏みにじる行動は日本人の風習から逸脱しており、戦争反対とは別次元の愚行である。
コインに表と裏があるように物事も100%善悪がつくようなものではない。歴史は善悪ではなく、未来に向けて冷静な検証が大切である。戦争は起こすだけではなく、巻き込まれ引きずり込まれることが大半であろう。そうならないよう、襲われない国づくりこそ、自身や子供たちを守ることにつながると私は思う。
空爆責任者カーチス・E・ルメイ少将をして、
横浜大空襲の場合、目視が可能な朝から行われ、焼夷弾攻撃で商工業地及び住宅地がどのように燃えていくか“データ収集のための実験的攻撃”といわれています。
「もし、我々が負けていたら、私は戦争犯罪人として裁かれていただろう。幸い、私は勝者の方に属していた」と語らしめた意図的空襲でした。
記事中の横浜大空襲による戦災消失地域の画像および上記の言葉は「YOKOHAMA xy通信」さま http://tadkawakita.sakura.ne.jp/db/
(旧ブログ「2013 横浜わが街シリーズ」さま)記事No.150 5月29日 記憶すべき記録、記録すべき記憶 より引用掲載させていただきました。