命の水『水道民営化』~都内サラリーマンからのご寄稿~
西日本集中豪雨の被災者ならびに関係者の皆さま、心よりお見舞い申し上げます。
私は常日頃、自分なりに防災対策をしてきたと自負していた一人でした。
一人3L×7日×家族の水、カセットコンロ、そのためのガス段ボールひと箱、カセットコンロガス専用暖房器具、遮熱シート、2階からの折り畳みはしご、設置&持ち運びのポータブルトイレ各種・・・を周囲から笑われるほど揃え、買い替えています。
しかし、東日本大震災の津波に加え、鬼怒川の堤防決壊、広島の土砂災害、震源地が動く九州大震災、そして今回の西日本集中豪雨で、何をしたらいいのかと途方にくれております。
人口が集中する東京都では他の地域以上に個人の備蓄を含めた対策が必要になります。災害時はインフラが寸断され、当たり前の電気・ガス・水道は不通になり、コンビニの商品も品切れの事態になります。しかし、政府は20年以上ろくなインフラ投資をしていません。私の就職当時の20年前と比べ、現在では半分しかお金を使っていないのです。しかも、道路や水道、下水道管の寿命は40年ほどで高度経済成長期に親世代が投資してきたインフラはやり直す時期で減額は考えられず、いつ使えなくなるか分からないのです。
災害時、最も必要とされるのは水です。料金を滞納しても最後まで水は止められないと聞いたことがあるでしょう。生きていくために必須ゆえ、自治体が最低限の料金で世界一安全でおいしい水を安く提供し、私達はそれを飲むことができるのです。
その水が大きく変わろうとしています。7月の西日本集中豪雨の混乱の中でも国会では、水道民営化が議論され、昨年一度流れたものの、今回は国会終了後も厚生労働委員会で審議継続ということになりました。
東京都では、昨年末12月26日に都政改革本部で水道民営化の流れとなりました。小池百合子都知事をトップとした彼らの決定「下水道コンセッション」を日経新聞が翌日報じましたが、大多数の都民は知らないと思います。国会で水道民営化が通過すれば、水道料金のメーターチェックだけでなく運営も外資系を含めた民間企業が担うことになるでしょう。
今回、継続審議されている「改正PFI」(Private Finance Initiative)には水道民営化に関して地方議会を通さずに自治体の長が決められる内容が盛り込まれています。ですから、PFIが改正されれば、都知事の一存で都議会を無視して、水道民営化ができることになります。
勿論、東京都に限らず全ての自治体で可能なのです。
知事の一存にて独占的に一民間企業に水をまかせることに不安を覚えるのは私だけでしょうか。災害時、最も必要だと言われる水が値上がりし、断水の際の給水車の費用はどこが負担するのでしょうか?
海外に目を移すと1990年代フランスが水道民営化をし、水道代金は15年間で2.5倍に値上がりしました。イギリスでは会社の経営陣が高額報酬をもらいながらも水道利用者は断水・漏水で苦みました。アフリカでは、水道代金が支払えないと、川の水に逆戻りした結果はコレラの大流行になり300人以上が亡くなりました。
民営化で企業が切磋琢磨し料金が安くなるというイメージは、残念ながら水には当てはまりません。なぜなら、地中に複数の水道管を埋めることは現実的には不可能で競争原理は働かないからです。すでに実施した海外では国民運動にて再公営化が相次いだことからも分かるように国民にはメリットよりデメリットが大きいのです。
Wワークをしており、休みは月に1~4日。妻に日常生活や子供達のもろもろを丸投げの日々で、妻の話を聞く余裕すらないのが実情です。妻が水道民営化で大変になる、という言葉も煩いと正直聞き流していました。ふと、通勤途中にスマホで検索し、東京都は災害だけでなく、普段から水で困るかも知れない・・・と背筋が寒くなりました。
水へのインフラ投資、お金を出し渋ることは私達、そして子供や孫たちが安く安心して水を飲めないという恐怖の未来につながるのでしょう。民間企業のサラリーマンの一人として儲けを求めない民間はない!と断言します。私達はNGOではなく、顧客サービスはするも赤字では倒産するので継続できません。
水道、ガス、電気、道路などのインフラは先人たちからの贈り物であり、私達にも未来に責任があるのです。
追記:水道民営化のことを知り、妻がうるさいのではなく自分が生活に留意する余裕もなかったことを実感しました。ご多忙の方々にも知っていただけたら幸いと恥を承知で寄稿した次第です。お付き合いありがとうございました。