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【寄稿Vol.4 井上薫氏】43年前・・・東京を救った男たちがいた~第十雄洋丸タンカー大炎上事故~

 2018/02/05 寄稿
この記事は約 4 分で読めます。 9,295 Views

皆さんは43年前、海上自衛隊が遂行した任務の1ページをご存知だろうか?

東京湾において衝突事故による大火災を起こした石油タンカー「第十雄洋丸」が、海保の巡視船と民間船舶により外洋は曳航された後、護衛艦、対潜哨戒機、潜水艦を動員して総攻撃し、撃沈し、東京湾を、ひいては国民の生命財産を懸命に護り抜いたこと。

東京湾のど真ん中で前方不注意で衝突事故を起こし、大爆発を起こしたタンカーは、全長227㍍、44000トンという巨大船だった。
しかも、液化石油ガスとナフサを満載の状態

ご存知、ナフサはベトナム戦争において、ナパーム弾の原料として使われたものである。

このまま燃え続ければ、4000時間は燃え尽きない。

しかも、もし大爆発を起こせば、想像を絶する大惨事になる事は、
誰の目にも明らかだった。

最初にその「巨大爆弾」に、勇敢にも接近したのが、海上保安庁の巡視船「ひりゅう」だった。

元航海士の佐々木平氏は述懐する。
ナフサの滝が流れ落ちる状態だった。消化を続けても下火になりそうな雰囲気は、なかった。」

「巨大爆弾」となった第十雄洋丸は、東京湾を漂流し始めた。
その先には、横須賀港

着岸すれば、間違いなく大惨事。

民間の船の決死の接近で、この巨大爆弾の船尾に、ロープがかけられた。

巨大爆弾の横須賀着岸まで、なんと、あと1.8キロの地点だった。。。

一度は動かぬように座礁させられた第十雄洋丸だったが、地元の漁業関係者から、海洋汚染を心配する声が上がった。

こうなればもはや、タンカーは外洋に出すしか、ない。

海上保安庁の巡視船15隻と民間の船とで、タンカーは外洋へ慎重に曳航されたが、再び大爆発を起こしてしまい、漂流することとなった。

このままでは4000時間は燃え続け、船舶航行の障害となるばかりか、海洋汚染の危険もある。

遂に、海上自衛隊

潜水艦「なるしお」(初代)をはじめ
護衛艦
「もちつき」
「たかつき」
「はるな」
「ゆきかぜ」

そして対潜哨戒機
「P2V7」

が出動するという、まさに「本物の有事」なみの陣容で撃沈作戦は、始まった。

護衛艦は、左右両舷に艦砲射撃で穴をあけ、ナフサを流出させる。

対潜哨戒機で、真上から爆撃し、焼き尽くす

という、二段構えである。

ところが・・・。

第十雄洋丸は、極めて強靭だった。150発の艦砲射撃を食らっても、全く沈まなかったのである。

沈まないどころか、10度傾いた姿勢は、水平に戻ってしまった。

これには作戦を指揮した護衛艦隊司令官・宮田啓助氏は驚愕した。「テキは難物」と書き記している。

タンカーは、高張力鋼という、極めて頑丈な金属で作られており、艦砲射撃にさえ耐え抜いていたのだ。

ここで潜水艦「なるしお」が投入された。

「実弾魚雷発射」は、自衛隊史上初である。この実弾魚雷発射作戦で、潜水艦内でボタンを押したのは、もと「なるしお」機関士の斉藤隆氏である。

魚雷は見事命中。
ついにタンカー「第十雄洋丸」は力尽き、犬吠埼約500キロの外洋に、大きな軋み音を響かせながら、
深海に沈んでいった。

ここで考えてみたい。命がけで東京湾を、日本を護った男たち

そんな自衛官に、総理大臣・吉田茂が、残した言葉

君たちは自衛隊在職中、決して国民から歓迎されたり、感謝されたりすること無く、自衛隊を終わるかもしれない。
きっと、非難や叱咤ばかりの一生かもしれない。
諸君らに置かれては、大変ご苦労である。
だが自衛隊が、国民から歓迎されチヤホヤされる事態とは、この日本が外国から攻められ国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、
国民が困窮し、国家が混乱に直面している時だけなのだ。
言葉を換えれば、諸君らが日陰者でいるときのほうが、国家や国民は、幸せなのだ。どうか、耐えて貰いたい

ここまで命がけで、国家と、国民の、毎日のありふれた日常と幸せを護ってくれた彼らに、我らは尊敬や感謝の念を、忘れずに生活できているだろうか?

我らが普段、まず目にしない空の上で、海の中で、彼らは懸命に、我らを護ってくれているのだ。

その感謝を、忘れずにできているだろうか?

写真:ウィキペディア(そうりゅう型潜水艦)より

なるしお潜水艦については、ウィキペディアHPをご覧ください。https://ja.wikipedia.org/wiki/

 

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浅野 耀子

浅野 耀子

さざれ石の会の会員として、都内で街頭演説、室内トーク、コラム執筆。
障がい児の親としても、障がいとの共存を模索しながら、子供たちと共に成長を目指す発展途上中の母親。

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