「おはようからおやすみまで」身近な生活必需品『ライオン株主総会』見聞録
満開の桜にうららかな陽射し。相撲の聖地、両国国技館で3月30日にライオンの株主総会は行われた。
定刻5分前、取締役一人ひとりが挨拶をし着席する。
10:00 掬川社長が議長席へ移動
ライブ配信の実施についての説明と注意事項を告げ、コロナウイルス被害者へお見舞いを述べ、議事進行について説明。
10:05 財務報にかかる内部統制について
10:06 監査報告(新川俊之常勤監査役)
10:09 事業報告(映像とナレーション)
Vision2030について。配当は6期連続増配。
10:21 対処すべき課題(掬川社長)
構造改革により、利益率8%をだし、成長投資を継続して強化していく。
パーパスを基軸にしたサスティナブルな社会への貢献する。
Vision2030を中長期経営計画として掲げ、次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーになる。
生活習慣の拡大=『経済価値』と生活習慣の進化=『社会価値』を循環させる。
オーラルヘルスでは、歯磨きの習慣化から予防歯科習慣への変化。
セルフケアとプロケアを併用し、「一生にわたりか心地よく食べ、話し、笑い、自分らしく過ごす。」=『習慣化による健康づくり』。
『エコの習慣化』=生活者との共利。脱炭素社会へ、資源循環型社会へ。
平成初期の『構造改革』という単語に、英語まじりの説明から始まり不安を覚える説明の出だしであったが、後半は生活必需品の企業ということで具体的かつ、消費者の一人としても分かりやすいものであった。
企業も消費者も取引先(歯科、卸業者、小売店)も皆がウィン・ウィンになる企業姿勢を感じる事業報告であった。
10:38 決議事項
1号議案 定款一部変更の件
2号議案 取締役専任の件
10:41 質疑応答について(1人1問)
事前質問
① 第1号議案は、定款の一部修正だが、第1章2項目的の変更は、事業の幅を広げすぎではないか?
→Vision2030において習慣の進化をすることにより、『物の提供』から『物+事(サービス)の提供』に進化していく。
例えば、ペット関連、不動産、保険なども扱うために変更する。
②第2号議案の取締役の専任の件だが、社内取締役に女性がいないのは閉鎖的ではないか?
→社外取締役に女性が2名いるものの、社内取締役に女性はいない。
多様性の確保は重要視しているが、男女にこだわらず、資質や知識など人物本位。執行役員に2名の女性がいるように今後も積極的に女性を活用していく。
③株価低迷と今後の対策
→株価は、社会・経済・金融で決まるが、中長期的には企業価値が反映される。
2021年11月より下落が激しいが、減価償却と原材料の高騰が要因ではないか。
進化による事業拡大や商品の付加価値向上により、中期計画の目標、中長期計画を達成し、企業価値を向上させたい。
また、資本市場に対しても積極的に情報を公開していきたい。
④ロシアによるウクライナ進行による影響は?
→直接の投資や取引はないが、原油高騰をはじめエネルギー価格の上昇により原材料か高騰し、結果として減益になる。原材料のサプライヤーと密な取引をして減益リスクを軽減していきたい。
⑤原材料価格上昇な伴う製品の値上げは?
→仕入れる原価を売値に単純に転嫁することはない。付加価値をあげることにより、製品単価を上げて対応したい。
10:51来場者の質問
(コロナ対策としてマスク着用で1人1問。
マイクスタンドへ移動し、ライブ配信のため出席番号のみで質問。)
10:52
0023(前列中央♂)
令和5年3月に本社を墨田区から台東区に移転するが、そのメリットは?
小林健二郎取締役→本社周辺4所に分散している拠点を一箇所に集めることによるシナジー効果。
コロナ禍での本社の在宅勤務は7割になり、移転後はデスクワークというよりコミュニケーションの場にしていきたい。
0046(中央奥♀)
アクロン、ソフランを始めライオン製品を愛用しているが、香りがきつく化学物質過敏症が心配。周囲の知人も香りがきついと話し、ユーザー離れにつながるのではないか。
マイクロカプセルによる香料は、ネットで香害も指摘され、欧州では規制され、アメリカでも日用品には禁止されている。
排水による環境、人体への影響は?
企業理念を踏まえ、香料の今後の方針とマイクロカプセルによる香害の認識と今後をしりたい。
乗竹史智取締役→香害問題があることは認識している。国際機関の安全基準にのっとっており、国内の石鹸関連の団体においても積極的に開示している。
香りについては、市場ニーズに対応した結果であり、香りを抑えた商品も展開しており、ホームページでも紹介しているのでみてほしい。
香害とマイクロプラスチックの問題だが、海洋へ5mm以下のプラごみの問題がある。
欧州が禁止しているスクラブ剤などは配合していないが、今後も情報をキャッチし、減少や停止もふくめ検討しているので、安心して使用してほしい。
掬川社長→香りについては、以前よりキツくなる傾向がある。業界指導ではなく、顧客ニーズにあわせた香りの強化のセレクトだが、選択肢も提供している。
また、適正な使用量の啓発にも努めている。
マイクロカプセルの指摘は増えているが、科学的なデータはなく、より安心な素材の開発の方向性でいる。
0191(前列♂)
値上げにより、大手スーパーから取引停止に追い込まれた同業他社がある。これは、ライオンが店頭実現力のチャンスではないか。
ライオンが16%出資しているプラネット社を活用してほしい。
三國執行役員→原材料が値上がりしているが、そのまま価格転嫁することは考えていない。
店頭価格についても一方的な値上げはしない。流通との結びつきを強めるチャンスであり、卸さんと一体となり小売り店との関係を強化していかきたい。
掬川社長→プラネット社は、卸さんとメーカーの注文管理のデータを扱う会社で、受発注データだけでなく、今後は物理データも扱い、物流の効率化につなげたい。
0329(前方♀)
ライオンの社内取締役は、プロパー社員であり新入生社員をはじめ、目標となり夢がありいいことだと思う。
派遣法の改正以降、派遣社員が増える傾向にある。ライオンは、オフィスと生産拠点があるが、直接雇用と派遣雇用との実情をしりたい。
小林健二郎取締役→社会の流れをうけ、有期雇用から無期雇用に切り替え、パート勤務から正社員へ登用を積極的におこなっていきたい。
小池陽子執行役員→派遣社員10.5%、パート3.5%で13.7%が正社員以外の雇用だが、世間一般より割合は低い。
498名がオフィス、261名が生産部門で勤務している。
少しずつ正社員化をすすめていくが、働く人の選択メニューとしての働き方も維持していく。
0332(後方♂)
本社の移転だが、先日の東電の電力供給や富士山の火山灰などの自然災害を鑑み、集約していいのだろうか?
榊原健郎取締役→電力供給、災害を想定し、安全衛生防災会議で方針を定め、訓練をしている。
本社に問題が生じた場合は、大阪本社で対応していく。
生産物流では、要請に応じ年2回訓練し、工場と倉庫は自家発電に対応している。
生活必需品を取り扱う会社なので、供給を、維持していく。
0314(左前方♂)コロナ禍で海外の子会社とのコミュニケーションは?。監査などグループのリスクマネージメントは?
鈴木均→海外との現地コミュニケーションはリモートで行い、監査もリモートで行っている。
状況に応じて海外出張を解禁し、リモートと両立していきたい。
リンアネット執行役員→海外出張からリモートに変わり、かえって気軽にコミュニケーションがとれるようになった。
短時間に頻繁に連絡をとることができ、想定以上に密なコミュニケーションがとれている。
また、現地の駐在員が現地状況を本社にあげている。
11:36あとお一人。と掬川社長
0030(後方♂)
原油価格が高騰し、同業他社では60億円の損失を見込んでいるそうだが、ライオンの原料として使用しているパームオイルも影響があるか。
お土産がないと通知の上で株主総会に多くの株主がくる。同業他社では受付で手指消毒薬を配布された。そのような配慮があると嬉しい。
乗竹史智取締役→パームオイルは界面活性剤として使用しており、コロナ禍の投機マネーの流入先にもなっており、ウクライナのひまわり油減産の代替えとしての需要もあり、価格が高騰している。
原油、植物油の原料高騰は60億円程度を見込んでいるが、コストダウンにて、価格転嫁を抑えていきたい。
小林健二郎取締役→感染予防の観点から株主総会でのお土産はテイシしている。3月上旬にご自宅に製品を送付しているので、愛用してほしい。
11:45決議
第1号議案、団2号議案成立
11:46新取締役の福田取締役の紹介
11:47閉会
直近の身近な話題が質問にあがった。ウクライナ紛争による、原材料の高騰。
製品値上げによる同業他社の状況。
長期的視点による、本社移転による集約のリスクマネジメント。
近年ホットな話題でもある、環境や香害についても感情論ではなく、疑問に思ったことを聞き取りや調べた上でのユーザー目線かつ冷静な質問。
派遣社員が定着するとともに、コロナ禍で問題視されている雇用形態への質問。
日用品という日々の製品を扱うライオンだが、コールセンターへの問い合わせのような質疑応答にはならず、全体的に株主らしい質問が多かった。
議長も拙い質問であっても、遮ることなく丁寧に聞き、各取締役、執行役員の返答も論点をずらすことなく真摯であったように感じた。
コロナ禍を口実に一時間ほどで終了し、株主の質問すら威嚇するかのように中断する株主総会も多い中、爽やかな気持ちで会場をあとにした。