【2020株主総会見聞録Vol.4】日産自動車~株主がリードした株主総会~
昨年、今年と臨時株主が開催された日産自動車。業績低迷で株主の配当を見送ると通達した今回の株主総会。
梅雨時とは思えない快晴のもと、例年とは異なり日産グローバル本社にて総会は行われた。
会場前には、例年通りに労働組合の全国ユニオンがビラまきを行っていた。
本社入り口を入ると、総会翌日の6月30日に発売予定の新車キックスが2台展示されており
後方にはリーフ(うち一台は新入社員のメッセージが貼ってあった。)が2台展示されてあった。
総会の会場は入り口1階のホールと2階席で、株主は取締役が着席する2階の本会場から案内され、質問希望者は整理券を受け取ったのちに2階席に誘導された。
2階は一列あけた上で、さらに一席ごとあけて座るスタイルで、1階は椅子を1.5M間隔ずつあけて配置され、マスク着用のよびかけ、アルコール消毒、十分なソーシャルディスタンスが保たれていた。
1階ホール横にはギャラリーカフェがあり、カフェへの通路は片面が総ガラスでもう片面の壁には日産の歴史が表示されていた。
スタバカフェは残念クローズしており、知らずに入った株主が警備員から追い出されていた。(本来、平日8:00-営業)
総会通知に飲み物の配布なしだけでなく、カフェの臨時休業や総会で立ち入れる1階2階では自販機がない旨を書いてほしかった。
臨時株主総会666名出席に対し、今回の定員は400名前後。9時の開場と同時に多くの株主が訪れ、9時半を待たずして本会場の2階が満席。
この事態を予想できたであろうに、派遣であろうスタッフは自販機のことを聞かれても答えられず、警備員から追い出されるなど株主を蔑ろにする不愉快な対応であった。
定刻10:00にスタートした総会
壇上に議長含め8人、会場最前列に取締役3名ならびに部門の役員らが着席し、スナール取締役ら2名がフランスからのビデオ参加。
10:07-10:24事業報告
事業の行動改革。具体的には、固定費3000億円カット(インドネシア閉鎖、バルセロナ閉鎖準備中)。
集中と選択。具体的には、日本・中国・北米を中心に販売し、車種を絞る。
内容は例年と大差なく、構造改革と3回連呼し、リストラを断行することだけが分かった。
10:25インターネット質問より3つ抜粋して返答(→以降が経営陣の返答)
①配当についての考え
→利益還元は重要な柱だが、事業の構造改革と投資の継続のため、黒字化のあと配当を再開。
②役員報酬の減額について
→内田社長50%をはじめ執行役の減額。賞与の見送りなど。
③国内市場の強化
→日本市場でのプレゼンスを向上させる。ブランド向上、マーケットのシェアの回復。
10:30質疑応答(内容を変更せず、簡略して記載。→以降経営陣の返答、⇒返答にたいする株主の再質問など。)
整理番号順に、一人1問2分簡潔に、との議長の声掛けで、11:00終了をめどに。と内田議長。
①質問前に提案をしたいと
「コロナ禍でも質問があり来場しているのだから、11:00ではなく整理券をもつ株主すべてに質疑応答をさせたらどうか。
ソーシャルディスタンスも保たれており、議長の判断で柔軟に対応してほしい。」
→「可能な限り多くの質問にお答えしたい。」
報酬削減について。「内田さん5割、その他6名の執行取締役3割、執行役員2割削減が半年。執行役を兼務していない取締役9名は削減なしと理解した。
報酬委員会委員長の井原さん、なぜ執行役を兼務しない取締役は報酬削減しないのか。3割減収が妥当ではないか。
管理職の報酬削減を考えているか、内田社長より聞きたい。トヨタ自動車は報酬カットを実施している。」
→内田社長「会社の経営責任は、私COと執行役、執行役員が全ておうものと考えている。役員は成長に戻すとのいきごみで昇給は凍結しているが、その他は検討していない。」
井原報酬委員会委員長「業績に関するもの、業務執行に対する責任についての報酬措置は取締役には適用していない。
理由は、独立取締役は、独立客観的な立場から経営を監督することで、会社法における監督と執行の分離の実効性を高めていきたい。
執行サイドを監督するということが独立取締役に求められている。責任を明確にするためにも業務に関するもの、業務執行の責任に対する報酬措置は行っていない。」
⇒「要は、取締役9名の方は報酬を削減していない、との理解でよろしいですね?」
→井原報酬委員会委員長「ベンチマーク企業を鑑み検討したが、監督と執行の分離が会社法でも期待されているので明確にするため、このような措置。」
⇒「YESかNOでお答えください。」
→同「今回は削減はありません。」
⇒「井原さんも2年前に社外取締役に就任している。永井さんも。ゴーンさんの不正も監査できていなかった。
執行役以外の役員も責任があり、報酬削減をすべきだ。株主は配当ゼロなのだから、今後は心して取り組んでほしい。」
②法令違反が常態化しているにも関わらず、監査報告書には違反なしと記載されている。
西川社長が謝罪するも、指名委員会があってもゴーン体制の時より悪化している。なぜ報告しないのか、把握していないか。
→永井監査委員会委員長「手続きに時間がかかる。」
「同日就任でも別日程で登記されている。」と批判。
ともに、井原取締役、永井取締役を指名しての質問であった。
③株価対策について
④取締役の株の不保持への遺憾。より多くの取締役に壇上にあがってほしいとの要望。
⑤ルノーより日産の技術の方が優れているのではないか。アライアンスによる共倒れの危惧。
⑥日産は消滅の危機でも改革に時間がかかりすぎる。取締役候補者が内田社長ではなく、木村取締役会議長だが、だれがトップかわからない。
→内田社長「執行、経営責任は100%私。」
社外取締役は現場を知っているのか。スピードが必要だ。
→木村取締役会議長「執行と監督が分離。執行を任せ、それを監督する立場。」
⑦北米の過度なインセンティブの改善後の対応。20年前を省み、サプライヤーへの安心対策。
→社内、ユーザーの信頼回復。短期収益の利益追求から、中長期の視点。
サプライヤーとも密に連携していく。
⑧トヨタのスマートシティ、本田の二足歩行などと比較し、技術を活かせていないのではないか。
取締役は特許を見たことがあるのか?次世代の育成が必要。
→一部取締役が特許をみたと挙手。開発担当役員が返答。
⑨信頼回復というが、取締役会でゴーン氏に弁明の機会もなかったことへの対応への疑念。
→永井監査員会委員長「陰謀論はない。不正は社内内部チームと社外の機関で連携して出した結果。
刑事は審議中で、民事は100億円提訴。ケリー氏は係争中。西川氏の投資日の移動は道義的責任はあるが違法性はない。」
11:28「あとお二人」と内田議長
⑩選択と集中というが、ディーラーは売れる車がないと話す。使いづらいから売れない。
株価が500円きったら責任をとると2月の臨時株主総会で表明するも、現在400円前後だ。
→日産ネクスト。明日のキックスの発売をはじめ日本市場に新車を投入していく。
⑪今後の開発について、配当の復活、懇親会について
→コロナ後の業績回復後。
10:50採決
10:51閉会
トップバッターの株主の質問前の提案は、株主全体を鑑みての発言であり素晴らしいスタートであった。
それを受け、柔軟に対応し、返答への再質問を認めた内田議長の議事進行も、ともに評価されるだろう。
兼任で存在感もなく、株主総会を欠席したり、座っているだけが多い社外取締役。
分離されている業務内容を把握し、的確に質問することは株主のみならず、会社にとりプラスである。
赤字による役員の報酬削減について、執行の監督責任は独立取締役にはないのだろうか。
野球チームでチームの成績に責任をとらない監督はおらず、対応には甘さを感じた。
報告事項で構造改革と3回も連呼したことを含め不安も感じるが、
日本市場に新車を投入していくという姿勢と、内田社長の柔軟な対応に僅かな希望を持ち日産の未来を託したい。
不安が杞憂になり、希望が実現することを日産ファンとして切に願う。