2017電通株主総会【労務管理の改革はポーズだけ】
昨今、長時間労働やサービス残業や低賃が社会問題として取り上げている。
3月末に株主総会を開催した電通も2015年12月に新入社員の高橋まつりさんが自殺し、翌年2016年9月に労災認定をうけ、世間から厳しい視線が注がれている企業の一つだ。
株主からは、労務管理とデジタル広告の不正問題について追及があるだろうと株主総会に足を運んだ。
3月末定刻10時から始まった電通株主総会。冒頭から労務管理とデジタル広告の不正問題の謝罪から総会は始まった。引責辞任をした前社長の石井氏からの高橋まつりさんについての説明の概略はこうであった。
【長時間労働についての説明:石井氏】10:05-10:12
2015.12.15 高橋まつりさん自殺
2016.9.30 労災認定 2016.12.28 労働当局による書類送検
これを受け、内部調査および外部調査(法律事務所)を実施。
過重な現場主義、上下関係、現実とかい離した自己申告。現状を踏まえ、社内サークルや自己啓発を勤務時間とし、7項目の抜本的改革を2016.11に社長の名前で提示し、2017.1.22引責にて社長の職を退く。
業務量や組織について、2017.1労働環境改革推進室をつくり、法令順守ならびに社員の心身の健康を促進することを目的とする。
その他にも随処で今後の労務管理についての説明に多くの時間を割き、電通の労務管理に期待しようと思った。
残念ながら20番目の最後の質疑応答で私の期待は裏切られたことを知った。労務管理のスペシャリストと思われる新任予定の松原取締役から挨拶が欲しいとの株主に対し、労働問題解決のための新取締役候補が欠席との回答だった。あやうく椅子から転げ落ちることろだった。
様々な報告と今後についての説明ののち、10:54~13:25まで会場内で行われた質疑応答の最後が、担当するはずの取締役が欠席というと信じがたい事態であった。
怒号もなく穏やかではあったが最後の質疑応答がこれではと、出席した別の株主も落胆していた。彼は電通の株を売却すると総会後不信感を露わにしてしていた。
昨年度の株主総会は、OBの内輪ネタがあったが、今年度はなかった。オリンピックなどのスポーツ利権について昨年に引き続き質問があったが昨年の激しいやり取りとは異なり今年はあっさりしたものだった。
新規に話題になったのは女性プッシュや育児休暇などの労働者権利の問題が質問で、これは多くの総会でもある女性の社会進出ごり押しの傾向がそのまま反映されていた。企業イメージのためかも知れないが、女性プッシュが株主に利益になるとも思えなかった。
経営陣はグローバル戦略で海外事業重視の姿勢を昨年同様あらわしていた。OBからは世界の流れはグローバリズムではなくなってきているのでガバナンスはどうかと質問がでたが、戦略の変更はないようだ。
概してグローバリズム戦略、女性進出の積極的対応、労務管理の改革のアピールの総会だったが、松原取締役欠席からも改革には懐疑的だ。
スポーツ利権もOBに対しては無関係の姿勢を昨年同様つらぬいたが、週刊誌のすっぱ抜きもあり、グレーな印象を受けた。労務管理の改革をアピールする総会で担当取締役が欠席とはなんとも株主をばかにした総会という印象をもった。